参加者の声

第20回日本健康教育学会学術大会に参加して

高橋 浩之 (理事・千葉大学教育学部教授)

  •   福岡での第20回日本健康教育学会学術大会は,多くの方々が感想として述べているように,筒井学会長の人柄が表れた暖かく楽しい学会でした。
  •   私も研究人生が始まってから30年が過ぎ,「そもそも学術大会とは何だろう」などと立ち止まって考える機会が増えてきました。研究者としての業績を増やそうとするなら,少なくとも私の大学では研究成果を学会発表してもあまり意味がなく,査読のある雑誌に論文として掲載されなくてはなりません。知識を増やそうとしても,学術大会参加によって得られる知識は,書籍やインターネットでの調査に遠く及ばないでしょう。その中で,「学術大会の意味は?」というと,やはり,生の人間としての研究者同士が触れ合うことなのでしょう。
  •   おそらく筒井学会長も同じ考えで学術大会を準備されたのではないでしょうか。実際,この学会は,ゆったりとした筒井先生の人柄が表れた学会長講演といい,活発な交流が図られたグループワークといい,自由にファシリテーターが運営できたラウンドテーブルといい,融通が利く時間の中で発表・討論ができた口演発表といい,人と人とが出会い,新たなものが生まれるという学術大会の意義が十二分に満たされたものだったと思います。
  •   今大会に参加して,私も研究者としてのエネルギーを補給していただいたような気がします。筒井先生を始め,大会の運営に努力された方々に感謝するとともに,このような日本健康教育学会の伝統が守られるよう努力を続けたいと気持ちを新たにしました。


蝦名 玲子 (評議員・グローバルヘルスコミュニケーションズ 代表取締役社長)

  •   第20回日本健康教育学会学術大会は、内容の焦点が、健康教育というよりも、むしろヘルスプロモーションに当てられており、個人的に非常に関心の高いものであった。
  •   特に私の視野を広げ、関心と使命感を高めた内容は、平和学という視点から格差問題を述べた早稲田大学社会科学総合学術院の多賀秀敏教授の基調講演「平和と健康~平和学の視点から~」であった。平和学というのは、もともと戦争の終結法についての学問であったが、20世紀に入り、食料総数は人口数より多いのに、飢えが世界で第1位の死因となり、こうした状態をつくっている環境や経済を含めた社会の、構造的暴力に対応するためのものへと、学問領域が広がったという。そうした背景のなか、国連は、ウェルビーイングを、構造的暴力を克服して達成しうるポジティブな状態のひとつ、として位置づけるようになった。
  •   このような基調講演を受け、ウェルビーイングを考えるグループワークや、「3.11東日本大震災の現状下で、健康教育・ヘルスプロモーションは何を行うべきか」を考える自由集会が開催された。グループワークでは、「よく生き、生きがいのある人生をおくるために必要なものは何か」を検討し、改めて個々の多様性に気づくことができた。
  • また自由集会では、特に、福島大学共生システム理工学類の永幡幸司准教授の、新潟県中越地震の経験を生かした地震・津波による被災への対応・支援報告および、福島原発事故への対応の問題提起が、非常に考えさせられるものであった。
  •   ヘルスプロモーションの活動戦略として健康的な公共政策づくりが掲げられているが、本大会に参加した今、社会の構造的暴力という視点から、現在、日本で起きていることを分析したうえで、国民のウェルビーイングを高める策を練る必要性を強く感じている。


甲斐 裕子(評議員・財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 研究員)

  •   健康教育学会の学術大会には毎年参加しており、楽しみな学会のひとつです。今年は「出会いから交流へ」がテーマで、いつにも増して参加し交流できる大会でした。理由は3つあります。
  •  第一に、今年ならではの全員参加のグループワークがあげられます。私の参加したグループは学生も著名な先生も同席し、はじめは緊張感が漂っていました。けれども、時間の経過とともに議論が白熱し、最後にはお互いの立場を超えた一体感を味わうことができました。
  •  第二に、自分の発表です。今までは口頭発表でしたが、今年は勇気を出してラウンドテーブルを選択しました。おかげで様々な分野の先生方からじっくりコメントをいただくことができました。ワークショップでも話題提供しましたが、意外な分野の先生方からもご質問を受け、自分の研究成果が他分野でも生かせることに気づきました。このように多くの視点で前向きな意見をいただける学会はそんなに多くありません。
  •  第三に、懇親会です。大規模な学会の懇親会では身近な人としか話せないことも多いのですが、健康教育学会では知人を気軽に紹介し合ったり、論文でお名前を拝見するだけの先生とお話しできたりと、アットホームな雰囲気があります。特に今年は学会長自らの演奏もあり、より親密なものを感じました。
  •  私にとって、健康教育学会は「学際的で、参加と交流を重視し、若手にチャンスを与ええてくれる学会」です。ぜひもっと多くの方に、この学会の魅力を知っていただきたいと思います。そのためには、すべてのシーンで新しい人を迎え入れる雰囲気のある学会であって欲しいと願います。また、例えば大会企画を会員から一般公募するなどの工夫をしてみると、今以上に開かれた学会になるかもしれません。楽しくてためになる健康教育学会に、私はこれからも参加したいと思います。


安部景奈,堀川翔,溝下万里恵,山本久美子,新保みさ 
(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士前期課程)

  •   今回の学術大会では,様々な分野の研究者や経験豊かな実践家の方々と出会い,交流することができ,まさに「出会いから交流へ」を体感しました.
  •   まず,前夜祭では,ふだんではなかなかお話しすることができない先生方と,研究に関する素朴な疑問から,健康教育,ウェルビーイングとは何か,といった大きなテーマまでお話することができました.翌日からの学術大会でも,先生方が私たち学生の顔を覚えていて下さったことを嬉しく思いました.
  •   一般演題の口頭発表は,他の学会に比べて質疑応答の時間が長く設定されているため,一方的な発表に終わらず,発表者と会場の方々とが“交流”しているという実感がありました.質疑応答の時間だけにとどまらず,発表の前後にも,多くの方々から直接アドバイスをいただきました.
  •   グループワーク「ウェルビーイングを考える」では,初対面の方々とも,ワークを通して自然と打ち解けられたように思います.自分の人生において大切なことを発表し合う中で,先生方の考えに感銘を受けることも多々あり,良い刺激となりました.
  •   自由集会では,被災地への訪問や支援の報告が行われ,震災で起きた多くの課題に対し,健康教育の視点から議論が展開されました.多分野で活躍する先生方が一堂に会す議論に参加し,過去に蓄積されてきた知見のみでは対応することが難しく,現在の健康教育を見直す必要性を感じました.
  •   私たち学生は,まだまだ自分の専門分野について学ぶべきことが多く,学術大会のプログラムの選択では,テーマが偏りがちになります.しかし,今回の学術大会では,私たちのような学生でも,様々な分野にふれる工夫がされ,自分の知見が広がったように思います.この学術大会で得た貴重な経験,考え,出会いを大切にし,今後の活動に活かしていきたいと思っています.