日本健康教育学会
Japanese Society of Health Education and Promotion

報告:参加型交流セミナー(第1弾)

みんなで考えよう!話し合おう!共有しよう!

どう取り組むか!特定健診・特定保健指導

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LinkIcon報告:第3弾(2010..2.6)「困難事例から考える」


2008年1月12日(土)13:00~17:00 女子栄養大学駒込キャンパス

2007年度セミナーのねらいと総括

準備委員会委員長 座長
(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
岩永 俊博

1.ねらいと背景
  地域や職域などの現場では、特定健診、特定保健指導にどう取り組むかということでかなりゆれている。健診や指導の委託先に悩んだり、どういうふうにするのかがいまだに話題になっている状況もある。これまでも、個別的な指導や集団的な教室活動を展開したり、自主活動の支援など、様々な活動を取り組んできたが、それらとどう違うのか、あるいは違えるべきなのかという悩みを持っている人たちもいる。さらに、国が示したことをどう忠実に実施しようかというところにだけが話題になっているところもあるようである。そういう意味で、「特定健診、特定保健指導にどう取り組むか」という表題を掲げたときに、その話題性は幅が広く、とても焦点が絞りにくくなることが予想された。

  そこで、今回のセミナーでは、様々な立場の現場の人に、いまの状況や課題と思っていることを出してもらい、それに対してコメンテータからの意見やフロアでのディスカッションをとおして、むしろ「何を考えるべきか」ということを抽出するところにねらいをおいた。
ここで、「何を考えるべきか」ということは、単に「特定健診、特定保健指導をどうするべきかを考える」ということではなく、その上位の目的である「多くの住民の生活習慣を改善するためには何を考えるべきか」ということがあって、その中に今回の特定健診や特定保健指導はどう位置づけられるか、あるいはどのような切り口にするのか、そしてどのように実施するのかという順序で考えることが重要だと思われる。

  特定健診や特定保健指導を頑張っても、それで生活習慣が改善し、糖尿病や高血圧などが減少しなければ、意味はない。糖尿病対策プロジェクトと考えた場合、生活習慣の改善は大きな要因とはなるだろうが、それだけでは十分な糖尿病対策とは言えないであろう。例えば、血糖コントロールや血管管理の方法やその専門家の養成、あるいはその専門家へのアクセスなど、様々な条件整備が必要である。また、生活習慣対策として考えた場合、例えば継続できる運動習慣を例に考えれば、本人の知識や意識というものはあっても、家族や近隣の態度や行動、運動できる場の確保、適当な運動を指導してくれる人材など、この場合も様々な条件整備が必要である。このような様々な条件整備の一つとして、本人の意識や知識に働きかける場として保健指導を位置づけたり、あるいは自分の身体状況をチェックする場として健診を位置づけるなど、対策全体の枠のなかに位置づけた戦略を立てていかなければ、健診と保健指導だけで糖尿病の減少や医療費の削減を期待することは困難であろう。

  もう一つ考えるべきことは、「指導」といっても、相手は様々な人生経験を持ち、その過程で自分なりの考え方や生き方、価値観などを作り上げてきている人たちである。また、悪い生活習慣の危険性や改善方法について、様々な場や媒体を通して情報を得ている人たちでもある。さらに、自分の普段の暮らしのなかで、生活習慣が変わらないことに「時間がない」「場所がない」「検診など受けたことのない人が元気で長生きしているではないか」など、様々な言い訳も持っている人たちでもある。そのような人たちが、「大人のつきあいとして」ではなく、本気でつきあってくれる教室の持ち方、本気で考えてくれる支援の仕方も考える必要がある。このような生活習慣改善に、様々な分野の協働によって立ち向かっていくというのがヘルスプロモーションの考え方でもある。

  まだまだ考えるべきことはあるのだろうが、そのような背景のなかで、今回のセミナーが、現場での活動を進めるなかでの戦略、戦術を見出す出発点として位置づけた。

2.進め方
  以上のようなねらいと背景を持って、まず、現場からの話題提供ということで3人の方に問題点、課題などを提示してもらった。それを受けてフロアで、近くに座っている人と意見を交換してもらい、その結果をいくつか発表してもらった。その後、話題提供やフロアからの意見も踏まえて、3人のコメンテータからコメントをもらった。

  そこまでを前半として休憩に入り、休憩後は、まず、学会として準備してきた世話人からのコメントや問題提起をした。その後、さらにフロアでの意見交換と発表、そして話題提供者、コメンテータからの最終発言を経て最後にまとめをした。

3.総括的なまとめ
  今回は初めての試みであり、フロアでの意見交換にも時間を割いたため、話題提供者やコメンテータには言い足りなかった部分が相当残ったものと推察される。
しかし、発言いただいた方たちは、セミナーの目的や役割をきっちりつかんだ発言をいただいき、フロアの参加者も積極的に発言して活発に意見交換ができ、いい雰囲気のうちに終わることができた。

  大枠として抽出された課題を以下に示すが、もちろんこれは筆者の主観的な抽出であり、話題提供者やコメンテータの原稿のなかからさらなる課題を抽出していただければ幸いである。

  • 1)人材、財政などの実践者側の環境整備
  • 2)良い生活習慣のための風土づくり
  • 地域や職域全体で、健康な生活習慣を支援できるような風土をどのように作っていくかということ
  • 3)実践者側の健康に対する価値観と指導方法の変容
  • 多様な価値観を持つ対象者に対して、柔軟に対応しながら健康教育を進めていけるように、専門家の持つ価値観も柔軟性を持つ必要があるのではないかということ
  • 4)成果の表現方法を含めた評価方法
  • 生活習慣の改善が、即糖尿病の減少や医療費の改善に結びつかない状況で、何をもって成果というのかということも含めて、評価方法の開発ということ
  • 5)アウトソーシングする側、される側の質の確保
  • 6)地域格差、企業間格差
  • 専門家や施設なのに恵まれた地域、職域とそのような資源の乏しい地域、職域の格差にどう取り組むべきかということ
  • 7)個々の事業をマクロの視点で捉えることの必要性
  • ひとつひとつの事業をどうするかではなく全体目的、なんのためにやっているのか、本当の対象者は誰なんだというような、全体を捉えるということ
  • 8)今回のメタボの基準に入らないハイリスクグループへの対応
  • 太っていなくても、高血圧を持っている人や喫煙者への対策など、しなければならないことがおろそかにならないようにどのように取り組むかということ

これらの課題に対して、学会としての取り組み方も検討課題であろう。
参加頂いた皆様、話題提供者、コメンテータの皆様、準備委員の皆様、いろいろとお手伝いいただいた皆様に、深甚感謝