1 全般

2 緒言

3 方法・結果

4 考察

5 結論

6 文献

7 抄録

8 キーワード

9 タイトル

10 論文投稿と査読システム

11 採用決定後

12 倫理審査を受ける必要がある研究,受ける必要のない研究

13 倫理審査の申請者と手続き

14 倫理審査の内容

15 インフォームド・コンセント

16 研究計画

1 全 般

Q1-1: (原稿種類)原著,短報,実践報告のどれを選んだらよいのかわかりません.
論文を書き終わってから,原稿の種類を選ぶ場合もありますが,原稿の種類は目的によっても変わってくるため,論文を書く前に決めてから書き始めることをおすすめします.
種 類
内  容
原 著
独創性や新規性,さらに科学的に見て客観的な結論が得られている論文
短 報
原著には届かないものの,報告する価値がある論文.データ数が少ないなど,研究の限界は含まれていても,次の研究に発展する可能性がある論文
実践報告
健康教育・ヘルスプロモーションに関する実践活動の報告.実践報告論文には,報告された実践内容がこれからの実践や研究に役立つことを期待しています.すなわち,実践報告論文では,実践の内容(例:指導案や教材)やプロセス評価の報告がメインになります.ただし,なぜその実践を報告する価値があるのかを,できるだけ学術的に説明することが求められます.

Q1-2: (原稿書式)行番号をつけるのはどうしたらいいですか.
フォーマットがダウンロードできるよう,用意しました. LinkIcon書式フォーマット(WORD)
日本健康教育学会誌の原稿フォーマットについては,執筆要領に記載しています.よくお読みいただき,投稿ください.
なお,行番号を含め,書式のフォーマットについては,お使いのソフトのマニュアルでお確かめください..

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Q1-3: (原稿作成)学術的な論文の書き方のポイントはありますか..
まずは,論理的にまとめることがあげられます.ひと段落に言いたいことを1つに絞る「パラグラフ・ライティング」の方法をとると,論理的にまとめることができます.
また,先行研究のレビューも重要なポイントです.なぜなら,研究は研究が積み重なって発展していくからです.学術論文では,先行研究を踏まえた研究目的や先行研究を引用した考察が求められます.先行研究を用いることが,報告書や単なる感想文にならないポイントといえます.
読みやすい文章を書くこともポイントとしてあげられます.一文が長いと主語と述語があわなくなる可能性が高くなります.論文では,論理的な記述が求められるため,わかりやすく簡潔な文章が求められます.たとえば,多くの人が論文において,「考える」という言葉を語尾に用いますが,ほとんどの場合,削除しても内容が通じます.投稿前に,何度も読み返し,文章を推敲してください

Q1-4: (原稿作成)制限頁が書いてありますが,超過頁代を払えば無制限ですか.
著者が支払うからいくらでも書いて良いというものではありません.目安としては制限頁×1.2~1.4倍程度です.それ以上の長い論文は,目的が絞れていないなど,論文として問題が含まれている可能性があります.論文をまとめるにあたって,簡潔にまとめることはとても重要なことです.

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2 諸 言

Q2-1: 緒言を書くポイントを教えてください.
緒言は,社会的問題など広い話から徐々に研究の目的につながる課題へ絞り込んでいく,いわゆる逆三角形にまとめると良いといわれています.主な内容は以下のとおりです.
□ 研究の背景となる問題点をあげる
□ 問題点に対する過去の研究の知見と課題(先行研究のレビュー)を解説する
□ 本研究を行う意義と研究目的を述べる
研究によっては,研究で取り扱う専門的用語や理論を説明する必要があります.また,仮設が設定できる研究では仮説(研究でどのような結果が得られるか)を述べます.
読み終わったときに,「確かにこの研究は必要だ!」と読者を思わせることができれば,緒言としてよくまとまっているといえます.

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3 方法・結果

Q3-1: 研究で用いた質問項目は妥当性,信頼性がとれていないといけないのですか.
研究では基本的には,妥当性,信頼性がとれている質問項目を用います(特に,尺度や食事調査等).妥当性や信頼性の確認がされていない項目を用いる場合,その出所となる資料を引用文献としてつけ,項目が妥当であることを説明してください.

Q3-2: 教育現場では,対照群を設定するのが難しいのですが,どうしたらいいですか.
教育プログラムの実施可能性の検討など,研究の目的が教育効果の検証でない場合は,必ずしも対照群を設定する必要はありません.
教育介入の効果を調べるのであれば,対照(教育をしない)群を設定する必要があります.ただし,教育をしないことは倫理的問題がありますので,通常,研究時点では対照群を設け,研究が終わった後に,対照群に教育を行います.
対照群を設定しない研究デザインでは,介入の教育効果を主張することはできません.介入以外の要因(たとえばメディアからの情報)で,介入をしなくても,教育効果がみられるかもしれないからです.

Q3-3: 倫理委員会を通していない研究は,論文として投稿できないのですか..
本学会誌では,原則,倫理委員会の承認を得ているものとしています.
しかし,「実践報告」の論文など,倫理委員会の審査を行わなかった研究においては,ヘルシンキ宣言および疫学・臨床研究指針など研究倫理に関する指針を厳守して実施した研究であることがわかることを方法に記述してください.
倫理的に問題がないか,編集委員会で判断します.研究倫理で確認するポイントは,基本的以下の内容です.
□対象者が不利益を被らないこと
□研究参加について,対象者の自由意思を尊重していること(強制的な参加でないこと)
□個人情報保護を守っていること

Q3-4: たとえば30.0±2.3kgの±は使わないようにと指摘がありました.どうしてですか.
本学会誌では,標準偏差か標準誤差なのかを明確に示すため,±でなく,平均(標準偏差)30.0(2.3)kgといった記述を求めています.
その他にも,小数点以下の数値の扱いなど,統計ガイドラインに定めていますので,参照してください. LinkIcon統計ガイドラインPDF

Q3-5: 結果を表に示した場合,本文に書く必要はないですか.
表にある数値で主要なものに限定して記載することをすすめています.しかし,すべての数値を再度本文中に示すことは必ずしも必要はありません.読者が表やグラフを解釈するのに必要な解説を本文に記述します.
Q3-6: システマティックレビューを投稿する場合,PRISMA声明のチェックリストを論文中に記載する必要がありますか?
PRISMA声明に従った27項目のチェックリストそのものを入れる必要はありません.リストを用いてチェックしていることが論文に記載されていればOKです.ただし,査読のプロセスでチェックの再確認が必要と判断された場合は,チェックリストを追加書類として提出していただくことがあります.

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4 考 察

Q4-1: 考察を書くポイントを教えてください.
考察は,緒言と逆で,三角形にまとめるとよいといわれています.つまり,研究で得られた結果といったポイントから,さまざまな研究限界がするにもかかわらず,どこまで結果を一般化できるのか,研究結果が社会にどう役立つのかと考察をひろげていきます.考察の主な内容は以下のとおりです.
□ 本研究の目的と得られた結果を要約する
□ それぞれの結果について,先行研究を用いて考察する
□ 研究の限界を述べる
□ 今後の課題(内容によっては本研究結果の応用)を述べる
 緒言と同様,考察においても,先行研究を用いてまとめることが重要になります.先行研究を引用しないで,考察すると,研究者の考えのみになり,感想文のようになります.

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5 結 論

Q5-1: 結論には,何を書いたらいいですか.
結論は,その研究で得られた結論です.「結局どうだったのか」つまり,論文の最も言いたいことを書きます.今後の課題を書く場所ではありません.ただし,結果の繰り返しにならない工夫が必要です.

Q5-2: 謝辞と利益相反の違いがわかりません.
謝辞は,その研究や論文をまとめるにあたって協力や支援をしてくれたひとや団体に感謝の意を示すところです.政府や団体等から,研究費助成を受けた場合も謝辞に含まれます.
一方,利益相反(conflicts of interest)はその研究に利害関係がある人や団体がある場合,そのことを開示するところです.利害関係とは,著者に研究結果の解釈に影響を受けるような立場の人が含まれている場合,これにあたります.たとえば,ポジティブな結果を出すと,企業の売り上げに関わる場合で,著者がその企業の人であれば,利益相反に値します.しかし,利益相反を開示したからといって,それが掲載可否に影響するわけではありません.利益相反の開示の目的は,利益相反を加味して結果を解釈することであり,論文審査に公平な判断を行うことです.利益相反の記述は下記を参照してください.また,投稿時の資料として,利益相反開示書もご提出ください.
書き方の例:
利益相反がない場合・・・利益相反に相当する事項はない.
利益相反がある場合・・・著者◯◯◯◯は,☓☓☓☓との間に利益相反を有する.

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6 文 献

Q6-1: 引用文献はどれぐらいつけたらいいですか.引用する際,気をつけることはありますか.
引用文献は数が多ければ,いいわけではありません.論文に必要な適切な文献を選び,引用することが重要です.
 選ぶ基準として,査読付きの論文であることがあげられます.それは,研究は積み重なって進展していくものであるため,投稿される研究のベースがゆらぐものであればその論文自体の信頼性も低くなるからです.紀要や報告書など査読がない文献は避ける方が賢明です.
 インターネットの引用も同じ理由で信頼性が低い情報といえますが,インターネットの場合,紙媒体と異なり,削除されなくなる危険性があります.したがって,インターネットの引用文献の書き方には,アクセスした日を記載します.もし,同じ内容で紙媒体のものがある場合は,紙媒体の方を引用ください.
 また,選ぶ基準として,新しい文献であることもあげられます.理論開発の論文などの論文は,古い論文になると思いますが,研究の目的設定や結果の考察で引用する先行研究は,新しい知見であることが重要です.古い論文を使って議論しても,新規性を主張することはできません.

7 抄 録

Q7-1: 抄録の方法には何を書いたらいいですか.
研究にもよります.多くの研究論文に共通する事項として,対象者,研究デザイン,評価指標,解析は必要です.字数との兼ね合いで,どの程度詳細に述べるか,ご判断ください.

Q7-2: 結果には数値を入れる必要がありますか.
メインとなる結果については,数値まで記載することが望ましいです.

Q7-3: 抄録に引用文献は必要ですか.
基本的には必要ありません.しかし,研究によっては,ある特定の先行研究をベースにし,そのことを述べないと重要なことが伝わらない場合は,引用する場合があります.

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8 キーワード

  Q8-1: キーワードはどうやって決めたらいいですか.
その研究で重要な単語を3~5個あげます.タイトルや目的に使われている単語がキーワードになることが多いといえます.しかし,キーワードはその論文を検索するためにつけるものであるため,好き勝手につけてしまうと,検索されない恐れがでてきます.したがって,本学会誌では,PubMedで使われているMeSHタームを用いることを推奨しています.MeSHタームについては,PubMed(Medline),日本語は医学中央雑誌でご確認ください.

9 タイトル

; Q9-1: タイトルをつけるポイントはありますか.
その研究論文で何を扱っているのかを一言でいうのがタイトルになります.論文の内容を的確に表現するようにします.タイトルは,その研究論文の顔となるので,読者の目に留まるような工夫があってもよいでしょう.たとえば,研究の目的や結論を活用したタイトルも近年増えています.


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10 論文投稿と査読システム

  Q10-1: 査読はどのように進められるのですか.
本学会誌では,図のように進めています.
①投稿者から論文が投稿されます.
②委員長が担当編集委員を決定します.その後,担当編集委員が査読に回すのに値するかを確認します.
③査読に値すると判断された場合,2名の査読者を決めます.
④査読が開始されます.
⑤査読者から担当編集委員に意見が提出されます.担当編集委員(または,担当副編集委員長,編集委員長.審査結果により変わる)の確認を経て,投稿者へ審査結果が渡されます.
⑥⑦修正が求められた場合は,投稿者の修正,投稿後,再度査読が行われます.
⑧⑨最終決定は,編集長が行います.


  Q10-2: 査読期間はどれくらいですか.
現在,査読が開始されその結果が投稿者に届く平均期間は約2~3ヶ月です.また,修正が求められ,その修正原稿を提出する期間は1ヶ月でお願いしています.3ヶ月以上再投稿がない場合は,投稿者が取り下げたものとして扱う場合があります.したがって,修正原稿の提出が1ヶ月を過ぎる場合(もしくは取り下げる場合)は,事務局までそのことを連絡ください.
  Q10-3: 修正を依頼され,査読者に従って修正したのに,不採用になりました.どうしてですか.
「採用」の通知が来るまでは,どのような審査結果でも,不採用になる可能性があります.著者が査読者に従って修正したと思っていても,査読者には納得いかない修正の場合もあります.本学会誌では,不採用になった場合でも,きちんと著者にコメントを返すように,努めています.
  Q10-4: 2人の査読者の意見が異なり,論文修正に困っています.どうしたらいいですか.
査読者の意見が分かれることはよくあることです.そのために,複数の査読者をつけています.さらに,本学会誌では,査読者の他に担当編集委員をつけています.担当編集委員を含め,複数の査読意見を参考に,著者の考えで修正ください.もし,査読者の意見に反論する場合は,修正原稿提出の際に一緒に提出する「査読意見に対する回答」で,査読者に対して納得いく説明をしてください.査読者の意見は,論文をより良くするための参考意見であり,絶対的なものではありません.
  Q10-5: 査読者が的外れな指摘をしているのですが,それでも従わないといけませんか.
査読者の意見がすべて正しいことはなく,また,それに必ず従う必要はありません.査読者の意見に納得がいかない場合には,査読者が納得いくように,「査読意見に対する回答」で説明してください.その研究について,よくわかっているのは,投稿者です.査読者が内容を理解できるよう,丁寧に説明してください.
  Q10-6: 投稿規程に,修正原稿の再投稿では,査読意見に対する回答も提出してください.と書かれていますが,「査読意見に対する回答」はどのように書けばいいですか.
「査読意見に対する回答」では,査読者からの意見,一つ一つに対して回答をします.査読者のすべての意見を取り扱わなっかったり,意見を要約したりする投稿者がいますが,それは認められません.すべての意見について回答してください.
 「査読意見に対する回答」のフォーマットは決まっていませんが,査読者の意見をコピーし,その下あるいは右に,著者の回答を書くと,査読者も読みやすくなります.「査読意見に対する回答」の例をあげます.参考ください LinkIcon査読意見にたいする回答例PDF


  Q10-7: 不採用になったら,その論文はもう投稿できないのですか.
本学会誌では,内容が適していない場合の他に,修正に時間がかかると想定される場合も,不採用にすることがあります.その場合は,査読者のコメントを参考に時間をかけ修正し,もう一度,新規に投稿することをお勧めします.不採用の通知の際に書かれている委員長からのコメントを参考にしてください.なお,他誌への投稿をすすめる,と書かれていた場合は,内容が本学会誌に適さないということですので,他誌への投稿をご検討ください.
  Q10-8:査読において、著者が留意すべき点はありますか?
査読は、本学会誌はじめ、多くの学術雑誌において取り入れられているシステムです。
最大の目的は、論文および学会誌の質を保証することです。例えるなら、投稿論文は「原石」、査読は「砥石」であり、査読システムとは、原石を世に出すにふ さわしい形に磨き上げるブラッシュアップのプロセスといえます。
したがって、論文をより良くしようという建設的な思いのもとに、編集委員会や査読者が客観的な参考意見を提案するのが査読です。
査読者からの指摘を受けると、自分の論文を非難されたと思い、気分を害したり落ち込んだりすることがあるかもしれません。しかしながら「査読にこめられた思い」を感じることが大切です。さらに、査読者に歩み寄る謙虚さをもっ て、指摘に応えようと最大限努力してみることが望まれます。
どうしても納得できない場合は、査読者に理解してもらえるよう、できるだけ客観的なエビデンスを用いた丁寧な説明が必要です(10-5参照)


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11 採用決定後

; Q11-1: 採用が決まった後,何か作業は残っていますか.
本学会誌では,採用が決定してから,英文抄録を提出していただきます.最終的にまとまった和文抄録を英訳してください.なお,英文抄録は学術的論文の書き方を知っているネイティブからのチェックを受けてください.英語のキーワードも同様です.
 また,査読過程で和文タイトルが変更された場合は,最初に提出した英文タイトルも,再度みなおしてください.

; Q11-2: 最終原稿とは何を含みますか.
最終原稿には,タイトル,和文抄録,本文,図表,英文タイトル,英文抄録すべて含みます.学会誌に掲載されるすべての内容をご提出ください.なお,採用が決まってから,最終原稿の提出までの期間が短い場合もあります.英文抄録は,早めにとりかかっておいてください.
 また,著者校正は初校のみで,原則,誤字脱字といった細かい間違い以外の修正は認められません.したがいまして,最終原稿に間違いがないことを,著者ご自身で責任を持って確認してください.
  Q11-3: 著者校正のポイントを教えてください.
初校の原稿は図や表が入り,出版される形で来ます.ここでは,誤字脱字といった細かい間違いがないかをご確認ください.論文査読はすべて終わっていることから,文章の加筆・修正などの変更等は認められません.細かい間違いとは,文献の書き方なども含みます.丁寧にご確認ください.
; Q11-4: 別刷り申込みはいつするのですか.
別刷りは,著者校正の時に,印刷会社(レタープレス株式会社)から申込書が届きます.著者校正を提出する際,印刷会社へご提出ください.

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12倫理審査を受ける必要がある研究,受ける必要のない研究

; Q12-1: 論文を投稿しようと考えています.倫理審査の承認は必ず受けておく必要がありますか?
原則,総説・システマティックレビュー以外の原著論文,短報は、倫理審査委員会で承認されている研究であることが必須です.また,実践報告でも,介入研究は倫理審査委員会の承認が必要です.ただし,必ずしも倫理審査を必要としないケースもあります.必要としないケースについては,Q2-Q4をご参照ください.

; Q12-2: 倫理審査の承認が必ずしも必要のない研究とは,どのような研究ですか?
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」では,次のいずれかに該当する研究は指針の対象外(適用外研究)としています.
1)法令の規定により実施される研究
2)法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究
3)試料・情報のうち,以下のもののみを用いる研究
①既に学術的な価値が定まり,研究用として広く利用され,かつ,一般に入手可能な試料・情報
②既に連結不可能匿名化されている情報
県民栄養調査や,保健所が実施した地域住民を対象とした調査などで,すでに学術的な価値が定まっているものや,既に連結不可能匿名化されている情報を扱う場合は,審査適用外と考えられています.
  Q12-3: 現在,行政で実施した調査などのデータを二次利用して研究論文をまとめたいと考えています.倫理審査適用外と考えていますが,投稿する際,気をつけることはありますか?
論文の中で,その研究を倫理審査適用外と判断することが妥当であることをしっかりと記述してください.
所属先の倫理審査委員会や所属機関長から,審査適用外と判断されることもあります.そのような文書などがあれば,その点も記述してください.
当たり前のことですが,公開されているオープンデータなどの二次利用に必要な手続きや決済は,きちんと行ってください.研究に至る手順として,論文にも記述してください.
ただし,研究機関等では,このようなケースでも倫理審査の申請を要求される場合があります.所属機関の倫理審査委員会に問合せて,確認しておきましょう.
; Q12-4: 日常業務として健康教育を実施しています.そこで得た知見や教育のプロセス評価について実践報告したいと考えています.最初から研究目的で行ったわけではないので,倫理委員会の審査は受けていません.そのような場合でも,倫理審査の承認を受けたものでなければ,論文を投稿できませんか?
いくつかのケースが考えられます.
①対象となった人が特定されないように,連結不可能匿名化されている情報を扱う場合:
倫理審査の適用外です.審査を受けていなくても,査読者や読者が「適用外と判断することが妥当である」ことを理解できるように,しっかり記述してください.
②連結不可能匿名化が行われていない場合(個人が識別できる可能性がある場合):
個人情報の保護やインフォームド・コンセントなどの倫理性,研究の科学的な妥当性を問われます.既存の情報の利用や研究計画の妥当性などについて,倫理委員会での審査・承認を受けて下さい.
③日常業務で得た情報ではあるが,本来の業務目的とは異なる目的で使用する場合(目的外使用):
個人情報の保護,データの管理,実施者・関係者間で取り交わした文書なども含めて,倫理審査委員会への申請と承認が必要です.
  Q12-5: 日常業務として健康教育を実施しています.新しい教育方法の妥当性を検証したいと考えていて,今度,利用者の方に調査に協力してもらおうと思っています.そのような場合は,どうしたらよいですか?
教育方法の妥当性検証を目的とした介入研究になりますので,日常の業務を超えた行為を伴うと判断されます.倫理委員会の審査・承認を受ける必要があります.

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13 倫理審査の申請者と手続き

; Q13-1: 投稿規定では,「倫理委員会の承認を得ていること」とされています.所属している組織では,倫理委員会がありません.それでも,倫理委員会の承認は受けた方がよいですか?
倫理審査を受ける必要がある研究を計画されているのであれば,倫理審査委員会で,倫理的な配慮がなされた研究であることの承認を得る必要があります.研究計画責任者や予定されている筆頭著者の所属先になければ,共同研究者の所属先で審査を受けてください.そこにもなければ,学生時代に研究指導を受けた先生や,学会発表などでアドバイスを受けた先生方に相談してみましょう.関連分野の学会,実践活動先の病院,調査を依頼した健康科学などに関わる公益財団法人など,身近なところにも,倫理審査委員会を設置している機関があります.

; Q13-2: 倫理に関して,しっかりと勉強する機会がありませんでした.系統立てて学ぶことは必要ですか? 必要な場合,どこで学ぶことができますか?
現在,日本では,研究を実施する者は,研究の実施に先立ち,研究に関する倫理ならびに当該研究の実施に必要な知識および技術に関する教育・研修を受けることが義務づけられています.また,研究期間中も適宜継続して,教育・研修を受けることが求められます.このことは,国際的な共通認識となっていて,すでに倫理審査委員会をもつ研究機関や大学などに所属する研究者,教員,学部学生・大学院生,事務職員は,倫理や研究の不正防止のための研修を受けています.研究者や教員だけでなく,学生や事務職員にまで研修が義務づけられる,という時代になりました.
質問された方のように,積極的に学ぼうとされる姿勢はとても大事です.倫理に関しては,web上でも多くの解説資料がアップロードされています.
・文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針,平成26年12月22日.
LinkIconhttp://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1443_01.pdf
・文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス,平成27年2月9日(平成27年3月31日一部改訂). LinkIconhttp://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1500_02.pdf
また,CITI Japanが行っている「ONスクリーンeラーニング講座」でコースを修了すると,受講証明書が発行されます.
  Q13-3: CITI Japan「ONスクリーンeラーニング講座」とは何ですか?
CITI Japan ONスクリーンは,科学研究および医学教育のためのeラーニングプログラムです.医学部教員等を中心とした米国(CITI)および日本(CITI JAPAN PROGRAM)の2つのNPO団体が協力して作成しています.現在,大学や研究機関に所属する者は,所属機関が機関登録していれば,平成24〜28年度は無料で受講することができます.特定の機関に所属していない個人,および機関登録していない企業や病院などに所属している者は,有料になります.現在,多くの大学等がCITI Japan e-ラーニングシステムに登録しており,科学技術振興機構でも研究助成申請(科研費)者に履修を求めています.今後も,研究助成申請のさいに,「ONスクリーンeラーニング講座」修了書の提出が求められるケースが増えると考えられています.

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14 倫理審査の内容

; Q14-1.倫理審査というのを受けたことがありません.そもそも,どのようなことを審査されるのでしょうか?
人を対象とした研究は,人間の尊厳および人権が守られ(倫理的観点),研究が適正に推進されるか(科学的観点)どうか,審査されます.
倫理的観点:研究対象者の権利,安全および福利(ウェルビーイング)が保護されているかどうか
科学的観点:意味なく対象者をリスクや不便にさらすことなく,科学的根拠のあるものかどうか.たとえ,害が及ぶ危険性がないとしても,非生産的な活動に対象者や研究実施者の時間を浪費するといった,価値ある資源の喪失になっていないかどうか
実際の審査は,次のような基本方針にそって行われます.
①社会的および学術的な意義を有する研究の実施
②研究分野の特性に応じた科学的合理性の確保
③研究対象者への負担ならびに予測されるリスクおよび利益の総合的評価
④独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査
⑤事前の十分な説明および研究対象者の自由意思による同意
⑥社会的に弱い立場にある者への特別な配慮
⑦個人情報等の保護
⑧研究の質および透明性の確保
いくら研究方法に間違いがないとしても,研究の目的そのものに価値がない研究というのは,人を対象とした場合に,倫理的かどうかを問われます.さらに,研究には,「負担ならびに予測されるリスクおよび利益の総合的評価」(リスク・ベネフィット評価)も求められます.そのため,科学的観点から研究計画も審査されます.


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15 インフォームド・コンセント

;Q 15-1.二次データの利用を予定しています.その場合,インフォームド・コンセントは必要ですか?
現在,保有している既存の資料や情報を用いて,当初の目的とは異なる研究を実施しようとする場合は,必要です.匿名化されていない試料・情報の場合には,情報公開・同意撤回の機会の保障が求められます.一方,必要な手続きをとった上で,行政のデータ等の匿名化されている既存資料・情報の提供を受けて研究を実施する場合は,不要です.
  Q15-2.対象者が子どもなど,同意を得にくい場合はどうしたらよいですか?
未成年者の場合,保護者から同意を得てください.また,未成年者や成人でも同意を得るのが難しい場合は,代わりの人(代諾者)から同意を得てください.論文では,本人から同意を得ることが難しい人を研究対象とする正当な理由を記載し,代諾者からのインフォームド・コンセントに関して明記してください.
同意を得るのが難しいというのは,例えば,乳幼児,知的障がい者(児),施設入所者などで,その対象集団に主にみられる特有の事象に関わる研究に限定されます.
未成年者でも,中学校等の課程を修了している人または16歳以上の人の場合,本人が研究の実施に関して十分な判断能力があると判断され,侵襲を伴わない研究の場合は,本人からのインフォームド・コンセントでよいです.その場合,研究の目的および研究の実施について情報を公開し,その研究の実施や継続について,研究対象者の親権者又は未成年後見人が拒否できる機会を保障することが必要です.
  Q15-3.インフォームド・コンセントを受けるさい,どのようなことを説明しておくべきですか?
原則として,以下のような内容があげられています.侵襲(軽微な侵襲を除く)を伴わない健康教育では,①から⑮に関する説明が必要になると考えられます.⑯以降については,研究計画と照らし合わせて判断してください.対象者には,文書または口頭で説明します.
①研究の名称および当該研究の実施について,研究機関の長の許可を受けている旨
②研究機関の名称および研究責任者の氏名(他の研究機関と共同して研究を実施する場合には,共同研究機関の名称および共同研究機関の研究責任者の氏名を含む.)
③研究の目的および意義
④研究の方法(研究対象者から取得された試料・情報の利用目的を含む.)および期間
⑤研究対象者として選定された理由
⑥研究対象者に生じる負担,予測されるリスクおよび利益
⑦研究の実施や継続に同意した場合であっても,随時これを撤回できる旨(研究対象者等からの撤回の内容に従った措置を講じることが困難となる場合があるときは,その旨およびその理由)
⑧研究の実施や継続に同意しないこと,または同意を撤回することによって,研究対象者等が不利益な取扱いを受けない旨
⑨研究に関する情報公開の方法
⑩研究対象者等の求めに応じて,他の研究対象者等の個人情報等の保護および当該研究の独創性の確保に支障がない範囲内で,研究計画書および研究の方法に関する資料を入手又は閲覧できる旨,ならびにその入手又は閲覧の方法
⑪個人情報等の取扱い(匿名化する場合にはその方法を含む.)
⑫試料・情報の保管および廃棄の方法
⑬研究の資金源等,研究機関の研究に係る利益相反および個人の収益等,研究者等の研究に係る利益相反に関する状況
⑭研究対象者等およびその関係者からの相談等への対応
⑮研究対象者等に経済的負担又は謝礼がある場合には,その旨およびその内容
⑯通常の診療を超える医療行為を伴う研究の場合には,他の治療方法等に関する事項
⑰通常の診療を超える医療行為を伴う研究の場合には,研究対象者への研究実施後における医療の提供に関する対応
⑱研究の実施に伴い,研究対象者の健康,子孫に受け継がれ得る遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られる可能性がある場合には,研究対象者に係る研究結果(偶発的所見を含む.)の取扱い
⑲侵襲を伴う研究の場合には,当該研究によって生じた健康被害に対する補償の有無およびその内容
⑳研究対象者から取得された試料・情報について,研究対象者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性がある場合には,その旨と同意を受ける時点において想定される内容
㉑侵襲(軽微な侵襲を除く.)を伴う研究であって介入を行うものの場合には,研究対象者の秘密が保全されることを前提として,モニタリングに従事する者および監査に従事する者ならびに倫理審査委員会が,必要な範囲内において当該研究対象者に関する試料・情報を閲覧する旨
  Q15-4.研究内容によって,インフォームド・コンセントに違いはありますか?
対象者に侵襲が伴う場合や介入の有無などによって異なります.
①侵襲を伴う研究の場合
説明事項(Q12)を記載した文書により,インフォームド・コンセントが必要です.
②侵襲を伴わない研究の場合
②-1)介入研究
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ありません.ただし,文書によらない場合は,説明事項(Q12)について口頭によりインフォームド・コンセントを受け,説明の方法および内容ならびに受けた同意の内容に関する記録を作成する必要があります.
②-2)介入を行わない研究
②-2-1)人から取得された試料を用いる研究
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ありません.ただし,文書によらない場合は,説明事項について口頭によりインフォームド・コンセントを受け,説明の方法および内容ならびに受けた同意の内容に関する記録を作成する必要があります.
②-2-2)人体から取得された試料を用いない研究
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ではありません.ただし,文書によらない場合は,研究に用いられる情報の利用目的を含むその研究についての情報を対象者等に通知,あるいは公開し,研究の実施や継続について,対象者等が拒否できる機会を保障する必要があります.
  Q15-5.自分が所属する機関で保有されている既存の試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合,インフォームド・コンセントはどうしたらよいですか?
試料の種類や匿名化などによって異なります.
①人の体から取得された試料を用いる研究
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ありません.ただし,その場合は原則として文書での説明・同意,又は口頭での同意の記録を作成する必要があります.
ただし,このような手続を行うことが困難な場合,次のいずれかに該当する場合は,記録がなくても既存試料・情報が利用できます.
①-1)試料が匿名化されている場合.この場合の匿名化は,連結不可能匿名化,または連結可能匿名化ではあるが当該機関が対応表を保有しない場合に限ります.
①-2)試料の匿名化はされていないが,その取得時に目的外利用についての同意のみが与えられている場合,次に2つの要件を満たしている必要があります.
1.当該研究の実施について人体から取得された試料の利用目的を含む情報を研究対象者等に通知し,又は公開していること.
2.上記の別の研究についての同意が当該研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められること.
①-3)試料が①-1)および①-2)のいずれにも該当しない場合,次に掲げる全ての要件を満たしている必要があります.
1.当該研究の実施について,人体から取得された試料の利用目的を含む情報を,研究対象者等に通知し,又は公開していること.
2.研究が実施されることについて,研究対象者等が拒否できる機会を保障すること.
3.公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって,研究対象者等の同意を受けることが困難であること.
②人の体から取得された試料を用いない研究
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ありません.ただし,インフォームド・コンセントを受けない場合は,研究に用いられる情報が匿名化されている場合を除き,利用目的を含む当該研究についての情報を対象者等に通知,または公開し,研究が実施されることについて,対象者等が拒否できる機会を保障する必要があります.
  Q15-6.手続に基づいて(他の研究機関等から)既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合,インフォームド・コンセントはどうしたらよいですか?
必ずしも文書によるインフォームド・コンセントは必要ありません.ただし,インフォームド・コンセントを受けない場合は,その研究に用いることについて,既存試料・情報の提供を行う者(試料・情報の保有者や機関)によってしかるべき手続がとられていること,および対象者等から受けた同意の内容等を確認する必要があります(法令の規定により提供を受ける場合を除く).
匿名化されていない既存試料・情報を用いる場合(研究者等がインフォームド・コンセントを受ける場合を除く)は,その研究の実施についての情報を公開し,研究が実施されることについて,対象者等が同意を撤回できる機会を保障する必要があります.
  Q15-7.同意を受ける時点で特定していなかった研究を行う場合,試料・情報を利用するためには,どのような手続が必要ですか?
対象者等から同意を受ける時点で,想定される試料・情報の利用目的等について,可能な限り説明していることが前提です.説明をしていなければ,その後の目的外利用はできません.
その上で,利用目的等が新たに特定された場合は,研究計画書を作成又は変更し,新たに特定された利用目的等についての情報を対象者等に通知,または公開して,研究が実施されることについて,研究対象者等が同意を撤回できる機会を保障する必要があります.



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16 研究計画

; Q16-1.研究計画をたてるとき,どのような心構えが必要ですか?
研究対象者への配慮が必要です(人権の尊重).実施者の責務として,次のようなことがあげられます.
①対象者となる人の生命,健康および人権を尊重します.
②実施するに当たって,原則としてインフォームド・コンセントを受けます.その際,適切な情報を提供していること,内容を適切に理解してもらっていること,自発的に協力を得ていること(強制ではない)が重要です.
③対象者,又はその代諾者や関係者等から,相談,問合せ,苦情等があった場合,適切かつ迅速に対応します.
④研究実施上で知り得た情報を,実施中や終了後,正当な理由なく漏らすようなことはしません.
⑤対象者等の人権を尊重する観点や研究の実施上の観点から,研究に関連する情報の漏えい等,重大な懸念が生じた場合には,速やかに研究機関長および研究責任者に報告します.
  Q16-2.介入研究を計画しています.臨床の場では「介入開始前に,研究計画の登録が必要」と聞きますが,健康教育の介入でも登録が必要ですか?
人を対象とした介入研究は,健康教育であっても登録は必要です.通常,連結不可能匿名化を行ってデータを扱うことを予定としている場合でも,登録を求められます.研究倫理審査を受ける際も,この介入の登録を行う予定があることの記載が必要になってきました.
登録先は,投稿規定にもありますように,国立大学附属病院長会議,一般財団法人日本医薬情報センター又は公益社団法人日本医師会が設置している公開データベース等になります.詳細は以下のwebサイトを参照して下さい.
LinkIconhttp://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1500_02.pdf

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