日本健康教育学会ロゴ日本健康教育学会
Japanese Society of Health Education and Promotion

参加者の声

第21回日本健康教育学会学術大会に参加して

荒尾 孝 (理事・早稲田大学スポーツ科学学術院)

  •   第21回日本健康教育学会学術大会が、星旦ニ学会長のもと7月7日(土)~8日(日)に首都大学東京南大沢キャンパスで開催された。今回の大会では300人を超える参加者と一般演題86題を含む100題を超える発表があり、大変盛況であった。今回の大会では「ひとり一人の“夢と想い”を重視する住民の健康維持増進」がテーマとして掲げられ、新しい時代における人々の主体性のある夢の実現を支援するヘルスプロモーションの理論と実践方法の共有が提唱された。今回の大会では、筆者は特に学会長講演と特別講演の内容に興味をもったので、以下にそのことについて述べる。
  •   星学会長は学会長講演において、健康を支援し、その環境を整備するヘルスプロモーション活動の新しい基礎理論の一つとして「健理学」を提案された。この健理学の考え方は医学モデルの「病理学」に対比した生活モデルに基づく考え方であり、健康のポジティブな面を重視し、個人の主体性を尊重し、本人と支援者の相互学習とそのことによる相互の成長を重視するものとされている。健康教育やヘルスプロモーションといった健康に関わる理論は時代や社会の変遷に伴い変化を遂げるものであり、その時代に合った新たな理論を構築し、社会に発信することはこの分野の専門家としての責務でもある。しかしこれまでは、日本から新たな理論を発信するということは、ほとんど実践されてこなかった。このことを考えると、今大会における星大会長の「健理学」の提案は注目に値するものと思われる。今後、この理論についての実証的研究が数多く実施され、本理論のより一層の深化を願いたい。
  •   特別講演は建築家の村上 周三先生(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構 理事長 建築研究所・前所長)に「ヘルスプロモーションとしての健康維持増進に貢献する住宅・コミュニティのすすめ」というテーマでお話していただいた。建築家の立場から、住宅の在り方が人々の健康にどのような影響をもたらすかといったことについての細かなデータが示された。データの中には疫学的には問題があるようなものもあったものの、新たな領域との健康づくりに関する共同研究の意義を認識させられた講演であった。

西岡 伸紀(評議員・兵庫教育大学大学院)

  •  第21回学術大会では,研究発表や意見交換を存分に楽しませていただきました。当初,テーマに「住民の健康維持増進」とあり,青少年の健康教育に関心がある自分との接点が気になっていましたが,異分野の方々の発表や講演を拝聴し,自分の発表にも様々な質問をいただき,改めて学会の価値や良さを実感した次第です。また,発表される方々が,ご自分の研究の価値を信じ,その重要性や内容を訴えたり楽しそうに発表したり,質問に正対し時に反論したりする姿にも,その思いを強くしました。
  •  特別講演では,村上周三先生がヘルスプロモーションの具体的展開を紹介され,住宅・コミュニティは自分の専門ではないものの,学校施設の環境,その中の子どもたちの健康,学校を取り巻くコミュニティなどが連想され,ヘルスプロモーションにおける教育的機能の展開にも気づかされ,大きな示唆を得ることができました。
  •  懇親会においても,星先生の演奏を楽しみ,食事とアルコールを嗜みながら話がはずみ,時間が過ぎるのを忘れていました。
  •  星先生,事務局,運営委員の皆様が貴重な機会を提供くださったことに感謝申し上げます。
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林 芙美(評議員・千葉県立保健医療大学)

  •   小雨の降る梅雨らしい天候の中、星学会長の御講演「ひとり一人の“夢と想い”を重視する住民の健康維持増進」で始まった学術大会では、様々な専門分野の先生方のご発表やご発言を伺うことが出来、本当に学びの多い2日間となりました。
  •  私自身は今回筆頭で発表する予定はなく、共同発表者としての参加となりましたが、栄養教育研究会の自由集会ではグループの進捗状況を報告し、たくさんのアドバイスをいただき、今後に向けて目標を整理することができました。このワーキンググループでの活動がスタートしてから数か月間、メールでのやり取りのみでしたので、直接対話できたことでメンバーの関係性がより親密になったと感じました。
  •  学術大会のメインプログラムの中で、特に私が関心を持ったのは、学会長講演や特別講演での健康支援と支援環境の整備の両方を推進する「ゼロ次予防活動」の提案です。人々の心や想いは健康的に生きるために不可欠な要素ですが、収入や学歴といった社会経済的要因や家庭生活が豊かであることも健康を規定する重要な要因となっていること。その、健康的な環境の提供という点について、住宅の供給サイドの方々が、単なる快適な暮らしという枠を超えて、そこに住む人々の健康維持増進を目指した仕組みづくりを目指している事を知り、また1つ視野を広げることができました。
  •  健康問題は1つのセクターで解決できる問題ではないことは言うまでもありませんが、他のシンポジウムやご発表でも、改めて“協働(collaboration)”を強く意識した学術大会でした。さらに、多くの先生方は研究活動だけでなく熱心に実践活動に従事されており、非常に刺激を受けました。
  •  また、特別講演や懇親会の場で、星学会長がおっしゃった「非難と批判は違う。批判的な意見であれば、更なる研究発展のための代替案を提示するべきであり、それがなければ単なる非難である」といった意味合いのご発言がとても印象に残りました。私自身も研究の発展につながる前向きな発言や提案ができるよう、今後も健康教育学会の学術大会に参加し、学び続けたいと感じました。このような素晴らしい学術大会を主催された星学会長や事務局の諸先生方、また参加された先生方に深く感謝しております。

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米倉 礼子(正会員・消費者庁食品表示課)

  •  日本健康教育学会は、実践的な研究報告が多い上、自分の実践活動に参考になるヒントが得られることから、学会にもできる限り参加するようにしています。
  • 今年も様々な刺激を受けましたが、その中で特に印象に残っていることが2点あります。
  •  1点目は、1日目の懇親会後に開催された栄養教育研究会です。栄養教育の現場で、今当たり前のように情報提供されている食行動について、健康状態や栄養状態などどのようなエビデンスが存在するのかレビューするというものです。この会ならではの特徴は、若手研究者やレビュー等を実施したことが少ない実践者にとってハードルが少し高いレビューそのものを自主グループで学び、考え、仲間と議論していく過程を共有できる場だということです。こういった丁寧な過程を参加者が主体的に切磋琢磨しながら学ぶ姿勢が参加者の今後の実践研究に基礎につながっていくと感じました。
  •  2点目は、2日目に開かれた南先生の教育講演「Health Plan 2020 in Korea and WHO’s Health in all Policies」の質疑応答の中で、“韓国では、なぜ(どうして)施策を作る行政機関と研究者がうまく連携できているのか”という議論があったことです。科学研究費助成事業を組織上企画できない消費者庁に勤める私は、どうしたら、食品表示等に携わる研究者と公共政策につながるエビデンスを出していけるのか思い悩む日々ですが、このような発言を聞くと、多くの関係者が健康な社会やそこでの貢献について思いを持ちつつ、実は、両者がうまく連携、共有できていない現状を痛感しました。では、どうすべきなのか…。私なりに考えてみると、まずは学会員であり、公共政策に携わる人自らが、学会の場を通じて、目指そうとする方向性や必要なエビデンス、望ましいアプローチについて、議論できる場に顔を出すことが第一歩なのかもしれません。次回学会では、双方向に意見交換し、議論を積み上げることができるラウンドテーブルで、栄養表示など自らが関わる栄養施策についてテーマを提案することもひとつの試みではないかと考えるきっかけとなりました。

坂本侑香(正会員・株式会社日建設計)

  •  今回、私は人生で初めての学会発表でした。諸先輩方々を見ながら、いずれは…と思っていたものの、正直まだ先の話だと思っていました。
  •  発表内容は企業健康度の見える化の一つとして実施した、社内アンケート結果です。当初はアンケート結果のみの発表に多少ためらいもありましたが、同様の活動を検討されている方々のお役に立ちたいという思いもあり、発表を決意しました。
  •  初めての学会ということで、資料作成や発表については産業医の先生や、共同研究者、勉強会の諸先輩方に多々ご指導頂きました。当日は緊張しましたが、会場の雰囲気は温かく、気持良く発表することができました。発表後は、大変な達成感と充実感で一杯であり、緑に囲まれた会場の緑は一層しく、清々しく感じました。自身の成長と共に今後の活動へと繋がる大変貴重な機会となりました。
  •  学会発表を受け入れて下さった人事部の方々、多くのサポートを下さった共同研究者、産業医の先生、日頃お世話になっている諸先輩方に感謝申し上げます。
  •  今後も温かい健康教育学に参加させて頂きたいと思います。

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小梅川佳之(学生会員・早稲田大学スポーツ科学研究科修士課程)

  •  第21回学術大会において、口演発表をさせていただきました。初めての学会発表でしたが、会場は真剣な雰囲気の中にも過度な緊迫感などはなく、私のような学生にとっても発表しやすいものでした。発表後には先生方からお声掛けいただき、今後の研究への励みを頂くとともに、勝手ながら研究者として大先輩である先生方とのつながりを感じることができました。これも学会の持つ親しみやすさ故のことだと思います。
  •  一般口演では、様々な分野でご活躍されている研究者の方々の発表を拝聴させていただき、また、会場で交わされる活発な議論から、ヘルスプロモーションに関する自分とは異なる視点に触れ、新たな気付きを得ることができました。
  •  福田洋先生が座長を務められたシンポジウム「働き盛りの健康を支援する、職域でのヘルスプロモーション活動」では、職域においては労働安全とヘルスプロモーションの両方向からのアプローチが必要であり、さらにそれらを企業の生産性の向上へ繋げていくことが重要であることを確認しました。また、実際に企業でヘルスプロモーション活動を実践されている皆様の発表を拝聴できたことは、私にとって非常に有意義なものとなりました。具体的な事例を通して、健康づくりに対する社員の主体性を高めることの重要性やその困難さについて考えさせられる良い機会となりました。
  •  この度、貴重な経験と出会いを提供してくださいました星先生および学会運営関係者の皆様に感謝申し上げます。今後も是非学術大会に参加させていただこうと思います。

松下宗洋(非学会員・早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程)

  •  私は運営スタッフとしてですが、第21回健康教育学会学術大会へ参加させて頂きました。今回の学会参加は、健康教育学会の初参加であり、今まで運動やスポーツを中心に活動してきた私にとって“健康”を軸とした学術大会の初参加でもあります。そこで、初参加だからこそ見えた健康教育学会を素晴らしい学会だと感じた理由を大きく3つ述べたいと思います。
  •  まず、健康づくりへのアプローチの豊かさです。私は日ごろ健康教育を運動という切り口から考えています。しかし、本学会の参加者の方々は健康教育に対して、運動はもちろん、栄養・食生活、睡眠・休養、環境改善等ここでは書ききれないほど、様々なアプローチを行っていました。当たり前のことですが、健康というのは1つの要素からではなく、多くの要素により達成されているものだと改めて確認しました。
  •  次に、健康づくりの対象の広さです。当学会では、私が活動する地域保健だけでなく、産業保健や母子保健、学校保健、国際保健など、様々な人々の健康について考えられていました。1つの分野では、日本の全ての人の健康づくりを達成することは困難です。そのため、各分野の連携による健康づくりが必要になるはずです。この分野の垣根を越えた連携を生みやすい環境が、当学会の素晴らしさを際立たせていると思います。
  •  最後に、ラウンドテーブルの存在です。私は恥ずかしながらラウンドテーブルという素晴らしい仕組みを知りませんでした。ラウンドテーブルが盛況なことは、当学会の大きな特徴であると思います。先ほど申し上げましたように参加者の皆様が普段研究している分野や対象が異なるなかでも、“健康”という壮大な共通テーマを扱っているため生まれる一体感を感じました。
  •  今回の学会では様々な出会いがあり、各自の健康課題について熱い気持ちで取り組まれていることを知りました。とても良い刺激になりました。この出会いを大切にし、自分の活動に精を出して、来年成長した姿をお見せできればと思っております。

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